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本 大空へはばたこう~自立への挑戦~ 解説・資料版

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この企画が動き始めたのは、2021年11月でした。テーマは「入所施設は必要なのか?」この問いに、これまで多くの専門家や福祉関係者、マスコミが様々な意見を言ってきました。しかし、そこには、知的障害当事者の声はありませんでした。この企画では知的障害者が実際に取材し、そこで感じた生の声を伝えることを大切にしました。
 現在、日本には2000以上もの入所施設があり、そこにいる知的障害者は、およそ12万人。施設から地域移行をした人の数は、0人の入所施設が79%、1人が11・3%(2016年~17年・厚労省調査)。地域移行はほとんど進んでいません。その理由は、施設での支援が一番適切。退所者が増えると収入減になる。地域移行のためのノウハウがない。地域での居住の場が少ないなど、支援する側の都合が優先され、当事者の思いは無視されています。
この1年、入所施設が作られた歴史、そこで起きている人権無視、海外の状況などを取材してきました。その中で見えてきたのは、入所施設の存在そのものが問題なのだと。多くの入所者が集団でくらす中で、支援する人たちが優先するのは効率。それは、知的障害者を一人の人間とみていないことにもつながります。そこにはノーマライゼーションやインクルージョンの考え方がありませんでした。そして、多くの当事者が入所施設を出た後も心の傷に苦しんでいました。
後半では、入所施設を出た人、入所施設に入らなかった重度の知的障害者の人生を追いました。その中で強く思ったのは、周りの人たちの障害への理解が、その人の人生も変えてしまうことでした。
最初、考えていたのは、もっと短い映画でした。しかし、調査や取材を進めていく中で、入所施設の根深い問題、歴史まで踏み込まないと答えは出ないと考えました。そして、最終的にできたのが6章で構成したこの映画です。

すべての知的障害者が「大空へはばたき」、自分らしいくらしを実現する。その最初の一歩が「脱施設」です。
しかし、これは最初の一歩にすぎません。北海道のグループホームで起きた人権を無視する対応(結婚や同棲を望む人は不妊処置をする)は、知的障害者を一人の人間とは見ていません。入所施設とどこが違うのでしょうか?
本書には、「大空へはばたこう」の映画、インタビューに答えてくれた人たちが参加したシンポジウムでは語りきれなかったことを資料として収めました。
映像と言葉で表現する映画は、直接感情や雰囲気を感じてもらうことができます。しかし、時間の限られた映画では伝えきれなかったことが多くあります。映画を見た人が、もっと知りたいと思った時、いつでも映画を振り返り、私たちの伝えたいことが分かってほしい。そんな思いがあり、本書を作りました。

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